はじめて「介護」が必要になったら
まずは「相談」
介護が必要になるときは、突然やってきます。
病気、事故、老化など、その原因は様々です。
突然、目の前に突きつけられた現実に、だれもが混乱し、戸惑い、悩みます。
介護を必要とする方と、介護をする方との関係性(同居、別居、遠距離、親、兄弟姉妹、甥姪など)が複雑なこともあります。
もちろん、これまでの、自分や家族の生活や仕事もありますので、混乱するのは、当たり前のことです。
また、介護関係の仕事をしている方以外で、どうやって介護をすればいいのか、どんな制度があるのかを知らないのは当然です。
介護関係の仕事をしていても、“在宅介護”と“施設介護”があり、それぞれに多種多様なサービスがあり、毎年のように制度が改正されており、その全体像を把握して、理解することは、難しいのです。
それほどに、介護保険の制度は複雑です。
だからこそ、自分だけで、家族だけで、悩むことはやめましょう。
介護が必要になったときは、お住まいの市区町村の地域包括支援センター、入院先のソーシャルワーカー、介護関係の仕事をしている知人の方などに相談してください。
「本人の気持ち」と「家族の生活」
介護サービスを利用することにしても、まず直面する問題が、在宅で介護するのか、施設で介護してもらうのかという問題です。
本人の意向が確認できればある程度の方針は決められますが、それができない場合や、諸事情によりそれが許されない場合、「介護費用、生活環境、仕事の状況、価値観、ライフスタイル、介護者と介護される方との関係性」などを考えれば考えるほど、悩んでしまうのは仕方のないことです。
在宅介護であれば、家族が「どんなサービスを受けているのか」「このサービスでいいのか」など、目の前で見て、判断できます。
そして、何よりも、住み慣れた自宅での生活を続けることができます。
一方、施設介護であれば、事情は異なります。
特に、自分の親などが入所している場合、施設への一定程度の遠慮があるかもしれません。
また、食事・排泄・入浴・リハビリ・レクリエーションなど、一体、どのような介護(サービス)を受けているのかを知ることは、なかなか難しいのが本当のところです。
大抵の場合、本人が、施設に入ることを希望しないことが多いのも、悩みの種となります。
それでも、本人、そして、家族の生活や仕事を守っていくために、施設介護を選択することが、ベストということもあります。
さらに、介護をするには、長期戦を視野に入れることも必要です。
残念なことですが、介護を要する状態になってから、自立(介護を必要としない状態となる)となることは、非常に少ないのが現実です。 「在宅介護⇒施設介護」、「施設介護⇒在宅介護」となることもありますし、「在宅介護⇔施設介護」を繰り返すこともあり、また、その間に入院となるケースも非常に多くあります。
「キーパーソン」には誰がなる?
キーパーソンには誰がなるのかを、よく検討することも大切です。
あらゆる書類の確認や署名、介護方針の意向の確認などは、キーパーソンに求められることになります。
介護の方法や今後の方針を、本人はもとより、家族や親族でよく話し合って決めたいと思うのは、もっともなことです。
しかし、支援をする側が、本人や家族など、それぞれの方の希望や意向を個別にお聞きしてまとめようとすると、板挟みになってしまうことが多く、時間的にも、マンパワー的にも、できない(無理)のが現実です。
介護保険を利用するには「介護認定」が必要
介護保険を利用するには、介護保険料を納めているだけではだめです。
要介護認定の申請をして、要介護または要支援の認定を受けることが必要です。 詳しいことは、お住まいの市区町村の地域包括支援センターへ相談しましょう。
上手に介護保険を利用するには「ケアマネージャー(介護支援専門員)」が必要
介護保険を利用するには、介護保険料を納めており、要介護または要支援の認定を受けることが必要であることは前の項目で説明しました。
しかし、さらには、「ケアプラン(介護サービス計画書)」を作成し、毎月、「給付管理」という事務作業をする必要があります。
制度上は、本人や家族でも「自己作成」「セルフケアプラン」「マイケアプラン」として(呼び方は色々あります。)として、ケアマネージャーには頼らず、自分だけでもできることになっています。
しかし、実際的には、ほぼ不可能と思っていただいて間違いありません。
それだけ、専門知識と、時間や手間暇がかかるものだからです。
なお、それぞれの人に、「人生観、価値観、相性、好き嫌い」などの違いがあるように、ケアマネージャーや、ケアマネージャーが所属する居宅介護支援事業所も様々です。
ケアマネージャーの試験を受けるために必要な資格も非常に多くあり、裾野も広いため、ケアマネージャーは、それぞれに多種多様なバックグラウンドを持っており、必然的に、得意分野と不得意分野があります。
また、ケアマネージャーの仕事は、「人対人」の対人援助サービスであり、本人との関係性が良好であることはもとより、家族(特にキーパーソン)との関係性が良好であることが非常に重要です。
関係性が良くないと、ケアプランを作成したり、変更するために、十分な話し合いをすることが困難となることがあるからです。 ケアマネージャーとの相性が良くないと思ったときは、思い切って、ケアマネージャーを変更することも検討してみましょう。
「ケアマネージャー」はどうやって見つける?
在宅で介護をする場合は、お住まいの市区町村の「地域包括ケアセンター」へ相談してみましょう。
施設で介護をする場合は、その施設にケアマネージャーがいますので、自分で探す必要はありません。
地域包括支援センターには、管轄内のケアマネージャーの一覧表が用意されていますし、生活状況や身体の状態、病状などに合わせて、相応しいケアマネージャーを紹介してもらうことができます。
なお、ケアマネージャーは、必ず、毎月1回、自宅に訪問して様子を確認してくれますし、ケアプランを変更したり、入院したりする場合には、その都度、書類のやりとりや、話し合いをすることが必要となります。
いくら、情報通信手段が多様化し、便利になってきたとはいえ、対面でのやりとりは欠かせませんので、近くて、フットワークのいいケアマネージャーを選ぶことをお勧めします。
介護保険が利用できないときもある
介護保険サービスは、医療保険と違い、誰もが、すぐに利用できるわけではありません。
ここで、詳しく説明することはできませんが、介護保険を利用するには、前の項目で説明したとおり、要介護または要支援の認定受けることのほかにも、年齢によっても、次のような要件があります。
・65歳以上の人
65歳になると介護保険被保険者証が郵送で届きます。
原因を問わず、介護が必要であると認定されれば、介護保険を利用することができます。
・40歳~64歳で医療保険に加入している人
40歳になれば、医療保険料と一緒に介護保険料を納めるようになります。
しかし、介護保険の被保険者証は手元に届きません。
それでも、下記の特定疾病(老化が原因とされる病気)により介護が必要になったと認められた場合には、介護保険制度を利用することができます。
【特定疾病】
次のものが特定疾病となります。
①がん(がん末期)
②関節リウマチ
③筋萎縮性側索硬化症(ALS)
④後縦靭帯骨化症
⑤骨折を伴う骨粗しょう症
⑥初老期における認知症(アルツハイマー病、脳血管性認知症、レビー小体病等)
⑦パーキンソン病関連疾患 (進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病)
⑧脊髄小脳変性症
⑨脊柱管狭さく症
⑩早老症(ウェルナー症候群等)
⑪多系統萎縮症
⑫糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
⑬脳血管疾患(脳出血、脳梗塞等)
⑭閉塞性動脈硬化症
⑮慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息、びまん性汎細気管支炎)
⑯両側の膝関節又は股関節の著しい変形を伴う変形性関節症
「よりよい介護」を実現するには
介護保険制度は、「保険あって介護(サービス)なし」と言われることもあり、残念ながら、介護保険サービスで、必要とする支援のすべてをカバーできるわけではありません。
また、本人や家族の状況は常に変化します。
よって、介護には、「これが正解!」「これが絶対!」ということはありません。
だからこそ、支援される側と支援する側、それらをサポートする行政機関などとの連携は非常に重要です。
トライアンドエラーを繰り返し、支援者が連携し、情報を共有し、現在、そして、今後を見据えた支援の方法を模索していくことが、何よりも重要です。
注意事項
実際には、この他にも様々な法律上の規定がありますが、分かりやすくご説明するために、上記の記述(内容)は、それらをあえて考慮せず、簡略化してあります。