相続・遺言と戸籍調査

戸籍調査が必要となる理由

遺産分割協議をするにも、遺言書を書くにも、だれが法定相続人であるのかを、戸籍などで調査する必要があります。

なぜなら、遺産分割協議は、相続人全員で行わなければ、無効となるからです。

また、遺言書を書くときには、「遺留分()」を侵害した内容だと、「遺留分侵害請求権」を行使されてしまい、思った通りに相続させたり、遺贈(遺言による贈与)したりできなくなる可能性があるからです。

「遺留分」:一定の範囲の相続人に最低限保証された財産の取り分であり、その相続人が最低限主張できる相続分のことです。兄弟姉妹には認められていません。

法定相続人の調査方法(戸籍の調査方法)

「相続人の出生から死亡まで遡る」戸籍を、“すべて”取得して調査します

戸籍を取得するときは、本籍地がある市区町村の窓口に行って請求します。

郵送でも請求できますが、郵便局で取り扱っている「定額小為替」が必要であり、また、請求書の他にも身分証明書や返信用封筒の添付が必要であったりするため、根気のいる作業となることが少なくありません。

「定額小為替」

現金を定額小為替証書に換えて送付する送金方法で、「50円、100円、150円、200円、250円、300円、350円、400円、450円、500円、750円、1,000円」の12種類があり、金種にかかわらず1枚につき100円の発行手数料が必要です。送るときは、必要と見込まれる料金より少し多めに送り、請求した後で、不足分を送るよう役場から連絡を受けないようにしてください(二度手間となってしまいます)。お釣りは、定額小為替で返ってきますので、有効期限内(発行日から6か月)に、ゆうちょ銀行や郵便局の貯金窓口に持っていき、現金に換えることを忘れないように注意してください。

スタートは、死亡した人の最後の本籍地の市区町村役場となります。

このとき、「相続の手続きに必要なので、出生から死亡まで遡るすべての戸籍をください。」と言って、戸籍を請求してください

なお、死亡した人の最後の本籍地が分からない場合は、死亡した人の最後の住所地の市区町村役場に行って、「住民票の除票」を取得すれば、最後の本籍地の確認ができます。

ただし、「住民票の除票」の保存期間は5年間なので、その期間をすでに経過していると、取得できないこともありますので注意が必要です。

また、ようやく、戸籍を取得できたとしても、他の市町村から転籍してきている場合は、その前の本籍地の市町村役場へ、戸籍を請求する必要があります。

実際には、転籍をしていない人は少数であって、ひとつの市町村役場で「出生から死亡まで遡る」すべての戸籍が揃うことは少なく、殆どの場合、いくつもの市町村役場へ戸籍を請求することになります

あとは、それを繰り返して、出生までの戸籍を取得していきます

相続人が兄弟姉妹や甥姪の場合は調査が大変

この場合、相続人が子供や孫である場合より、相当な手間と時間がかかることになります。

必要な戸籍は、次のとおりです。

・死亡した人の「出生から死亡まで遡る」戸籍

・死亡した人の「亡父母の出生から死亡まで遡る」戸籍

・兄弟姉妹の全員の現在の戸籍

なお、亡父母が、明治後半や大正生まれの場合には、祖父母が死亡している記載がされている戸籍も必要になる場合があります。

また、死亡した人より、先に死亡した兄弟姉妹がいる場合、その兄弟姉妹の「出生から死亡まで遡る」戸籍も必要となります。

戸籍の見方(読み方)

戸籍をじっくり見たことがある人は少なくないと思います。

ある程度の知識がないと、何を書いてあるのか分かりませんし、「現在戸籍、除籍、改製原戸籍」など、いくつもの種類があり、読み込むことは至難の業です。

特に、昔の戸籍は、「筆書き、くずし字、変体仮名、異体字」で書かれており、「何て書いてあるのか読めない、読みにくい。」ということが多くあります

また、戸籍制度が何度も改正され、「明治5年式戸籍、明治19年式戸籍、明治31年式戸籍、大正4年式戸籍、昭和23年式戸籍、平成6年式戸籍(現在の戸籍)」と、いくつもの様式の戸籍があり、なおさら、読み込むことが難しくなっているのです。

さらには、戦災で焼失してしまっていて取得できないことや、「これ以上前の戸籍はありません。」と言われることもあります。

市町村の合併などにより、戸籍に記載されている市町村がなくなっていたり、名称が変更されていて、現在、その本籍地を管轄している市町村を調べることが必要となる場合もよくあります。

そのような場合は、専門家に相談することも検討してみてください。

思わぬ相続人の存在が判明することもある

戸籍の調査をすると、養子縁組をしていたり、死亡した人の前の配偶者(妻、夫)の間に子供がいたり、認知をしている子がいる場合など、思わぬ相続人の存在が分かることがあります

実際に相談を受けるときに、相談者からお聞きした相続人と、戸籍を調査して判明した相続人が違うということは、珍しくありません。

以前は、子供に恵まれないと、親戚から養子をもらったりすることがよくされていて、養子縁組は決して珍しいことではありませんでした。

また、離婚や再婚を繰り返している方も少なくありませんでした。

私が受任した、遺産分割協議書の作成業務でも、次のようなことがありました。

その案件は、「兄が亡くなり、親(さらには祖父母)はもう死亡しているので、相続人は妹である自分と、亡父が再婚してから生まれた異母の兄弟姉妹の3名」とのことで、相談が始まりました。

しかし、実際、戸籍を調査してみると、死亡した人は結婚と離婚を繰り返していて、お互いにその存在を知らない異母兄弟姉妹が複数名いらっしゃいました。

遺産分割協議は、相続人全員でしなければ無効となりますので、それぞれの相続人に、お手紙をお送りしました。

それぞれの兄弟姉妹の方々にとっては、まさに青天の霹靂だったと思います。

幸いなことに、すぐに連絡をいただけましたが、「知らない兄弟姉妹がいたなんて!」と、非常に驚いていらっしゃいました。

まとめ

遺産分割協議をするにも、遺言書を書くにも、だれが法定相続人であるのかを、戸籍で調査する必要があります。

しかも、戸籍を調査してみないと、だれが相続人であるのか確定できませんし、まったく存在を知らなかった相続人の存在が判明こともあります。

また、相続人がだれになるかによって、必要となる戸籍も異なってきます。

そして、戸籍を集めるのには相当な手間暇がかかることがあり、戸籍を読み込むには、大変な手間と時間が必要となります。

相続手続が必要な場合、遺言書を書く場合には、早め早めに、戸籍の調査をはじめることを心がけてください。

注意事項

実際には、この他にも様々な法律上の規定がありますが、分かりやすくご説明するために、上記の記述(内容)は、それらをあえて考慮せず、簡略化してあります。