成年後見人になって、困ったこと(その4 メリット・デメリット)

2021年6月23日

成年後見制度を利用することで、判断能力が低下しても、親類縁者や専門職などの支援を受けて生活をしていける、これは本当に素晴らしいことです。

しかし、ときには、成年後見人を悩ませる問題が発生することもあります。

成年後見制度は、いまや社会的に必要不可欠な制度となっていますが、あまり表に出ないような、対応に苦慮した経験などをお伝えすることで、成年後見人(保佐人、補助人を含む。)の活動に対して、より一層のご理解をいただければ幸いです。

そもそも成年後見制度とは

判断能力が不十分で、だれかの助けを必要とする方の生活を、家庭裁判所の関与の下で、支援し、支えるための制度です。

しかし、成年後見人が何でもできるワケではありません

これらのことは、「成年後見のメリット、デメリット」の記事でお伝えしたとおりです。

制度のはざまで

成年後見人に就任すると、本人の生活状況や経済状況に応じて、主に次の方々とチームを組んで、情報を共有し、連携ながら、それぞれの専門性や役割を果たすことで、本人の生活を支え、支援することになります。

親類縁者、中核地域生活支援センター、地域包括支援センター、社会福祉協議会、民生委員、近所の方、知人の方、ケアマネージャー(介護支援専門員)、相談支援専門員、入院先のソーシャルワーカー、入所先や通所先施設の相談員など

しかし、どうしても、「だれの役割ともいえない問題」や「他の支援者には頼めない問題」、さらには、次のような問題が発生します。

・本人の経済事情などにより対応できない問題

・イレギュラーで対応が困難な問題など

実際はこんなことが

【会社役員(代表清算人)として登記されていることが判明した】

成年後見人に就任してから後に、思いもよらない事実が分かることがあります。

定期的に確認している郵便物から、(督促状等で)申立書に記載されていない債務(借金)があることが分かったりすることが比較的多いのですが、今回は税務署から、法人税の確定申告書の提出をして欲しいとの通知が届きました。

申立書には、そのようなことに関する記載は全くなかったし、成年被後見人が会社の経営に関与していたことは初耳で驚きました。

もちろん、会社関係の資料などは一切、引き継いでいません。

また、役所に保護された方でしたので、後見人に就任した時に引き継いだ資料以外に、追加して入手できるものはありません。

しかし、そのままにするワケにはいかないため、税務署からの通知に記載されている会社の登記事項証明書を取得してみました。

すると、成年被後見人が、清算人と代表清算人として登記されており、さらには、その会社は解散の登記まではされているのですが、清算結了の登記がされていないことが分かりました。

ツマリ、その法人は、まだ法人としてまだ生きていて(活動中であり)、登記上(外見上、税務署などから見て)、成年被後見人が会社の代表者であって、会社を代表して税務申告する必要があることになっていたのです。

もちろん、会社関係の書類など全くありませんので確定申告などできるワケがありません。

また、成年被後見人は、その審判の確定と同時に清算人及び代表清算人を退任することとなっているため、法律上は、その会社の税務申告等について、何らの権限もないことになります。

※この点について、被保佐人や被補助人については、扱いが異なります。

そのため、すぐに税務署に行き、確定申告書の提出はできない事情などを説明しましたが、やはり、「代表清算人として登記されている以上、税務署としてはその方に申告してもらうようお願いするほかない。出資者(株主など)に相談して必要な手続きをとってもらうよう相談してもらうより仕方がないのでそちらを当たって欲しい。」という回答でした。

たしかに、登記がそのままとなっている以上、出資者に対して、新たに清算人及び代表清算人を選任してもらい、成年被後見人の方の退任の登記と新たに選任された方の就任の登記をしてもらうこと、少なくとも、そうしてもらう必要が生じていることを報告し、相談する必要があります。

そのためには、誰が出資者であるかなどを知る必要があるため、法務局で、清算人及び代表清算人として登記されたときの「附属書類」の閲覧をして、出資者の氏名と住所を調査しました。

なお、後見開始の審判(確定)を受けたとしても、清算人及び代表清算人としては退任となりますが、出資者でもあった場合、出資者としての責任を逃れられることにはなりません。

しかし、今回は幸いにも出資者とはなっていませんでした。

その後、出資者の方に事情説明と必要な手続きをお願いする手紙を出しましたが、何の返事もいただけないままとなっています。

【親族の意向がバラバラで板挟みになった】

成年後見人に就任すると、親族の方や関係者の方から、これまでの成年被後見人の方に関する情報を収集したり、必要な資料などを引き継いだり、親族の意向を確認したり、成年後見人の役割を説明したり必要があるため、できるだけ早い時期に親族に面会したり、挨拶状や質問状を送付することとなります。

残念なことですが、これまで受任したケースでは、親族との関係性が希薄であったり遠方であることが多く、面会が叶わなかったり、手紙の返事をもらえなかったりすることが多くありました。

その一方、親族が、積極的に関わってくれたり、情報を提供してくれたりするケースもあります。

しかし、そのような場合であったとしても、成年後見制度の利用を急ぐ事情などがあったため、申立人になった親族と、それ以外の親族の意向が十分に調整されないまま申立がされていることもあります。

その場合、後見人が、親族間の意見の対立に板挟みになったり、個別に面談を求められたり、電話やメールを受けたり、財産状況などについて報告を求められたり、場合によっては自分の意向に沿うよう求められたりすることもあります。

もちろん、後見人は、あくまで成年被後見人の代理人であり、包括的な代理権がありますし、後見事務の内容などについて親族に報告する義務はありません。

そして、何よりも、後見人は、成年被後見人の利益を優先し、その意向を推し量り、守秘義務を守り、時には親族と対峙する必要もあるのですが、親族との関係を良好に保ちながら、成年被後見人を取り巻く人間関係に配慮することも非常に重要です。

そのため、申立人の方などと相談して、報告する親族の代表者、報告の内容や時期などを決めるように話を進めていくのですが、その調整がうまくいかないこともあります。

その場合、親族への対応に悩みながら、後見人の役割(できること、できないことなど)を少しずつ説明して理解を求めながら、後見事務をしていかざるを得ないこととなります。

まとめ

成年後見制度は「社会的に必要不可欠な制度」となっています。

成年後見人の職責を果たすには、就任当初、予想だにしなかった問題に直面することがたくさんあります。

また、いつなんどき、緊急の連絡がくるのではないかと、気の抜けない日々の連続です。

それでも、たくさんの成年後見人が、日々、直面する問題を解決しようと頑張っています。

成年後見人の活動に対して、より一層のご理解をいただければ幸いです。

注意事項

実際には、この他にも様々な法律上の規定がありますが、分かりやすくご説明するために、上記の記述(内容)は、それらをあえて考慮せず、簡略化してあります。