成年後見人になって、困ったこと(その3 メリット・デメリット)

2021年6月28日

成年後見制度を利用することで、判断能力が低下しても、親類縁者や専門職などの支援を受けて生活をしていける、これは本当に素晴らしいことです。

しかし、ときには、成年後見人を悩ませる問題が発生することもあります。

成年後見制度は、いまや社会的に必要不可欠な制度となっていますが、あまり表に出ないような、対応に苦慮した経験などをお伝えすることで、成年後見人(保佐人、補助人を含む。)の活動に対して、より一層のご理解をいただければ幸いです。

そもそも成年後見制度とは

判断能力が不十分で、だれかの助けを必要とする方の生活を、家庭裁判所の関与の下で、支援し、支えるための制度です。

しかし、成年後見人が何でもできるワケではありません

これらのことは、「成年後見のメリット、デメリット」の記事でお伝えしたとおりです。

制度のはざまで

成年後見人に就任すると、本人の生活状況や経済状況に応じて、主に次の方々とチームを組んで、情報を共有し、連携ながら、それぞれの専門性や役割を果たすことで、本人の生活を支え、支援することになります。

親類縁者、中核地域生活支援センター、地域包括支援センター、社会福祉協議会、民生委員、近所の方、知人の方、ケアマネージャー(介護支援専門員)、相談支援専門員、入院先のソーシャルワーカー、入所先や通所先施設の相談員など

しかし、どうしても、「だれの役割ともいえない問題」や「他の支援者には頼めない問題」、さらには、次のような問題が発生します。

・本人の経済事情などにより対応できない問題

・イレギュラーで対応が困難な問題など

実際はこんなことが

【支援関係者が離れていく】

成年後見人がついた途端、それまで、本人を支援してくれていた方々が、「それではお役御免」とばかりに、離れて行ってしまうことがあります。

本人の支援は成年後見人だけで、できるようなものでは決してありません。

また、法律的にも、成年後見人ができることには制限(限界)があります

しかし、そのことを理解してもらえないことが多いのも事実です。

なお、平成30年4月に社会福祉法等の一部が改正され、地域共生社会の実現に向けた取り組みが進められています。

地域共生社会においては、「我が事・丸ごと」の地域づくり・包括的な支援体制の整備や仕組みづくりを目指すものとされています。

今後、地域共生社会が実現し、成年後見人が就任した後であっても、就任する前から関わってくれていた関係者やその他の関係者と、さらに広範かつ密に連携して対応できるようになり、後見人が孤独になったり、精神的負担を感じずに支援できるようになればと願っています。

【世代間ギャップ、価値観などの違いに悩む】

地球温暖化により、毎夏、記録的な猛暑となっています。

しかし、高齢になると、真夏の自宅内で、ジャンパーを着ている人も少なくありません。体温調節機能が低下してしまうのです。

せめて、扇風機かエアコンを使った方がいいと伝えても、高齢者の方には、戦中戦後を耐え忍んで生き抜いてきた人も多いので、「こんな電気製品なんて使わなくても、これまでなんでもなかった。電気代だってもったいない。」と言い、話を聞いてくれない方も多くいます。

また、最近の扇風機やエアコンは多機能で便利になったのですが、リモコンなどの操作ボタンが、明らかに高齢者には複雑になりすぎています。

しかし、実際には、熱中症で亡くなる方が、年々、急増しています。

成年後見人も、毎日、本人の無事を確認することは困難です。

夏になると、「大丈夫かな。倒れたりしていないかな。」と、心配ばかりして気が休まることがありません。

【お金を「渡した、もらってない」の問題に巻き込まれる】

本人が独居の場合、大抵は、定期的に日常生活費を渡しにいくことになります。

その都度、第三者に、立ち会ってもらえれば助かるのですが、なかなかそうもいきません。

そこで、誤解やトラブルを避ける為、お金を渡した都度、本人に署名(サイン)をもらいます。

しかし、ときとして、本人が「お金なんてもらっていない。」と親類縁者に言い出すことがあります。

そのような場合、親類縁者はどうしても本人の言うことを信用することが多く、署名(サイン)だけもらってお金を渡していないのではと、疑われてしまうことがあります。

知り合いの成年後見人で、結局、親族の方から訴えられた方もいます。

それを避けるには、普段、どのようにお金の受け渡しをしているか、支援関係者に理解をしてもらうように努めています。

しかし、お金を渡すときは、本人と成年後見人の二人だけ(相対)となってしまうことが殆どですので、非常に悩ましい問題です。

【ゴミ屋敷化していても本人は困っていない】

本人が独居の場合、自宅内はもとより、敷地内にゴミやゴミ袋が山積みになっていることも少なくありません。

成年後見人や近所の方からすると、早急に解決しなければならない問題なのですが、本人は困っていないと思っていることが多くあります。

また、ゴミ袋に入れられていても、殆どの場合、燃えるゴミと、燃えないゴミは仕分けされておらず、一緒の袋に入れられています。

しかも、本人にとっては、その状態の方が、かえって落ち着き、心地よい場合もあり、また、そもそもゴミではないと思っていたり、自分の生活の場(状況)を他人に触られたくないと思っている方も多くいます。

そのような状態で、訪問介護員(ヘルパー)に、ゴミ処理をお願いするのは無理があります。

なんでも屋さんに頼むという手もありますが、費用もかさみますし、何より、本人が承知してないまま片付けてしまうと、本人との信頼関係にヒビが入り、今後の支援が困難になってしまうことがあります。

これも非常に悩ましい問題です。

【支援拒否と好き嫌い】

客観的には、明らかに支援が必要な状態であっても、「自分は困っていない。何だって自分でできている。構わないで欲しい。」と思っている方がいます。

しかも、人の好き嫌いが激しかったり、男性または女性のいずれかの支援しか受け入れなかったりする方もいます。

そうなると、“支援”に入ることが困難となります。

そして、面会を重ねて、顔見知りの関係になるのに注力することになります。

しかし、関係づくりがうまくいかないと、支援拒否をされてしまいます。

認知症の方の場合だと、拒否した記憶が薄れていくこともありますが、精神疾患を患っている方の場合はそうはいきません。

拒否したことをずっと忘れないで、支援者に対する「負の感情」が残り続けてしまうこととなります。

このような場合、あの手この手を試し、トライアンドエラーを繰り返し、受け入れてもらう方法を根気強く、粘り強く探っていくことになります。

まとめ

成年後見制度は「社会的に必要不可欠な制度」となっています。

成年後見人の職責を果たすには、就任当初、予想だにしなかった問題に直面することがたくさんあります。

また、いつなんどき、緊急の連絡がくるのではないかと、気の抜けない日々の連続です。

それでも、たくさんの成年後見人が、日々、直面する問題を解決しようと頑張っています。

成年後見人の活動に対して、より一層のご理解をいただければ幸いです。

注意事項

実際には、この他にも様々な法律上の規定がありますが、分かりやすくご説明するために、上記の記述(内容)は、それらをあえて考慮せず、簡略化してあります。