終活の方法

2021年2月10日

「終活」の方法

「終活」の方法としては、代表的なものとして、次の3点が紹介されていることが多いと思います。

・「エンディングノート」を書く

・「遺言書」を書く

・「葬儀」や「お墓」のことを決めておく

しかし、「終活」には、その他にも、次のような方法があります。

・「死後事務委任契約」をしておく

・「継続的見守り契約」をしておく

・「財産管理委任契約」をしておく

・「任意後見制度(契約)」をしておく

それぞれの内容などについては、以下のとおりです。

エンディングノート

「もしもの時」のための「エンディングノート」”の記事を、ご覧ください。

遺言書

「自分が死んだ後の財産の処分はどうするのか」、「遺言書に書いた内容の執行(遺言執行)をだれにしてほしいのか」などを記載した、生前に、自分の意志で作成した法的な書類のことをいいます。

法的効力を持たせるためには、民法に規定された通りに作成する必要があり、規定に反する遺言は無効です。

遺言には、主に、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」という、普通方式としての3種類の遺言があります。

なお、その他にも、特別方式(危急時や隔絶地という特殊な状況にある場合に適用される4種類の遺言)としての遺言もあります。

一般的に利用される遺言は、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。

そして、最も安心で確実であるのは、公証人の関与の下で作成される「公正証書遺言」です

当事務所でも「公正証書遺言」をお勧めしています。

なお、「自筆証書遺言」については、自分だけで作成できることから、作成しやすいという反面、規定に反していると判断された多くの判例(事例)があり、注意が必要です。

例えば、次のような点につき、規定に反しているとした判例が、数多くあります。

・「自書」の要件をみたしているか?

・「日付」の記載方法や記載場所は適法か?

・「氏名」の記載方法や記載内容は適法か?

・「押印」の種類や場所は適法か?

・「加除や訂正」の方法は適法か?

規定に反しているとされた場合、遺言が無効となったり、遺言無効確認訴訟の対象となったり、遺言内容の解釈が困難となり遺言者の真意と異なって解釈されてしまうなどの可能性があります。

その場合、遺産をめぐる問題は「争族」問題となり、遺産分割協議や遺産分割調停が必要となり、解決は長期化してしまいます。

また、記載された内容が、遺言書の発見者に不利な内容だと「偽造・変造・破棄・隠匿」されたりするおそれがありますし、封印のある「自筆証書遺言」を勝手に開封したり、家庭裁判所の「検認」を受けないと、過料に処せられてしまうおそれもあります。

なお、令和2年7月に、「自筆証書遺言保管制度」が開始されました。

この制度を利用することにより、「偽造・変造・破棄・隠匿」されたり、勝手に開封されたりする心配はなくなりました。

また、家庭裁判所の「検認」を不要にできるようになりました。

しかし、法務局は、あくまで「保管をする」のであって、内容や方式の適法性、適正性はチェックしません

よって、「保管」はしたものの、記載内容がハッキリしなくて相続の手続きには使えない遺言であったり、遺留分を侵害していて遺留分侵害請求権の対象となる遺言であることもあります。

つまり、せっかく「保管」をしても、無効だったり、無用なトラブルの原因となる可能性もありますので、過信をすることは危険です

死後事務委任契約

「遺言書」では実現できない(「法定の遺言事項」ではない)死後に必要になる様々な手続きを、第三者へ委任する契約です。

法定の遺言事項

認知、未成年後見人・未成年後見監督人の指定、相続人の廃除や廃除の取消し、祭祀に関する権利承継者の指定(明文の規定はないが解釈により認められている)、相続分の指定や指定の委託、特別受益の持戻しの免除(明文の規定はないが解釈により認められている)、遺産分割方法の指定や指定の委託、相続開始から5年を超えない期間での遺産分割の禁止、相続人相互間での担保責任の分担、相続財産の全部または一部を処分すること、遺言執行者の指定や指定の委託、一般財団法人の設立、一般財団法人への財産の拠出、遺言による信託の設定、生命保険及び傷害疾病定額保険における保険金受取人の変更(H22.3.31以前に締結された保険契約を除く)

とても重要な契約ですので、「公正証書」で契約をすることが適当です。

具体的には、次に記載したことを依頼することができます(その中から、必要な手続きだけを委任することが可能です)。

死後事務契約で依頼できること(例)

病院・入所施設等から死亡又は危篤の連絡を受け現地への駆けつけ、葬儀会社へ連絡、ご遺体引取り、死亡診断書の受領、死亡届の提出、火葬許可の取得、病院・入所施設の居室内の私物整理、通夜や葬儀、火葬、墓地・納骨堂へ埋葬(永代供養も可能)、健康保険・介護保険・国民年金・厚生年金の抹消手続き、入院・入居費の精算や解約などの諸手続き、遺産整理の手配と調整、住居内の家財撤去、水道・ガス・電気等の公共サービス・新聞・電話などの解約や精算手続き、住民税・固定資産税等の納税手続き、各関係者への連絡・調整、ペットの里親探しとお引渡しなど

継続的見守り契約

生活や財産管理等のご不安に対応できるよう、助言したり定期的に、見守ったりしてもらうための契約です。

まだ元気で自分で生活ができているうちに、体力や判断能力の低下などの将来の心配に備えて、次のようなことを依頼できます。

【継続的見守り契約で依頼できること(例)】

毎月1回程度の電話と訪問、臨時の訪問、受診や入院等の手配、体調や生活状況の変化の見守り、認知症発症の有無の確認、介護サービス利用の要否の確認、医療サービス利用の要否の確認など

財産管理委任契約

判断能力には問題はないが自分では財産管理や支払い等ができなくなった場合に備えて、身体の自由がきかなくなったり、判断能力が低下してきたときに、財産管理などをしてもらい、生活をバックアップしてもらうための契約です。

財産管理委任契約で依頼できることは、次の「任後見制度(契約)」とほぼ同じ内容です。

任意後見制度(契約)

将来、自分が認知症などで判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ、自分が選んだ援助者(任意後見人)に、療養看護や財産管理など、代わりにしてもらいたいことを、公正証書による契約で決めておく制度です。

法定後見制度と異なり、判断能力がある元気なうちに、自分の価値観や人生観をよく理解・把握してくれている人、自分が信頼している人を、援助者(任意後見人)として自分の意思で選び、自分に代わってして欲しいことだけを任せることで、自分らしい生活を実現させることができます

この契約の効力は、判断能力が低下し、家庭裁判所によって任意後見監督人が選任されてから発生します。

任意後見契約では、次のようなことを依頼することができます。

【任意後見契約で依頼できること(例)】

財産の管理・保存、金融機関の取引代行、公共料金等の支払い、生活用品の購入や支払い等、税金の申告・納付、医療契約、入院契約、介護契約、要介護認定・更新申請など

なお、任意後見契約とあわせて、「継続的見守り契約」や「財産管理委任契約」を締結して、早い段階から援助を開始してもらうこともできます。

これにより、判断能力に問題はないけれども、身体的な衰えなどにより財産管理が負担となっている場合に、信頼できる人に財産管理を任せながら、スムーズに任意後見へ移行することができます。

また、軽度の認知症状、知的障がい、精神障がいがあり、すでに判断能力の低下がある場合には、任意後見契約の締結をして、すぐに任意後見を開始することもできます。

なお、任意後見人には取消権がないため、日ごろから連絡や面会をすることで本人に不利益が生じないように注意して、本人を保護することになります。

ただし、本人が「民法・消費者契約法・特定商取引に関する法律」などで取消権を取得したときは、任意後見人が本人に代わって取消権を行使できるとするのが通説となっています。

それぞれの制度(方法)の関係性

終活と「任意後見制度」「継続的見守り契約」「財産管理委任契約」などとの関係性”をご覧ください。

まとめ

人は、だれ一人として、同じ環境で生活している人はいません。

考え方、感じ方、経済状況、価値観、性格、親族関係、友人関係、立場などが異なるため、一概に、「これをしておけば安心(万全)」という「終活」の方法はありません

どのような「終活」をしておけばいいのか、どのように各制度(方法)を組み合わせておけば有効的なのかは、その人の置かれている環境などにより、異なってきます

あれこれ迷ってしまうかもしれません。

それでも、まず調べる、まず相談してみる、まず始める"という、最初の一歩を踏み出すことが大切です。

注意事項

実際には、この他にも様々な法律上の規定がありますが、分かりやすくご説明するために、上記の記述(内容)は、それらをあえて考慮せず、簡略化してあります。