生前贈与の相談でネット上の情報を考えさせられた

インターネットの利便性と危険性

インターネットを介して、気軽に、いつでも、どこからでも、大量の情報にアクセスできるのは、非常に便利なことです。

私も、毎日のように利用しています。

しかし、インターネット上の情報は、断片的、スポット的であり、中には真偽不明なものもありますので、そのことを十分に承知した上で、過信せず、多用しすぎず、上手に利用することが必要です。

インターネット上の情報を受け取る側も、発信する側も、そのことを前提にして、利用する必要があるのです。

インターネットで情報を提供する難しさ

ホームページやブログに掲載する記事などを書いていると、ふと、手が止まってしまうことが多くあります。

それは、ひとつの記事などで提供できる情報は、体系的ではなく、断片的、スポット的なものになってしまうため、読んでいただいている方にとって、本当に有益な情報になっているのか、ということが頭をよぎるからです。

ひとつひとつの情報については、それぞれについて数多くの専門書が発刊されており、そこには、体系的で、また、様々な周辺の論点について網羅された記載がされています。

けれども、現実的には、インターネットを介してアクセスできる情報が爆発的に増えているため、それら専門書などの書籍よりも、インターネットの方が、はるかに手軽で、身近な存在となっています

実際の相談で考えさせられたこと

以前、次のような相談を受けました(特定を避けるため、一部、内容を変えて記載しています)。

「夫の具合が悪くてあと1年位しかもたないと医者から言われている。夫との間には子が一人しかいないから相続人は私とその子しかいない。インターネットで見たら、生前贈与をすると税金が安くすむと書いてあったので、すぐにでも生前贈与の手続きをしたい。急いで生前贈与の契約書を作って欲しい。」

しかし、よく話を聞いてみると、預貯金は数百万円しかなく、その他の主な財産である自宅は持ち家でしたが、土地と建物の坪数や建物の築年数、そして、小規模宅地等の特例などをあわせて考えると、遺産の総額は、どう考えても、相続税の基礎控除未満と思われました。

また、余命が1年位であれば、たとえ生前贈与をしても、相続開始前3年以内の贈与は相続税の課税対象となるため、意味のない生前贈与であると思われました。

よって、「(税務署や税理士に相談する、不動産の評価額をきちんと調べる、戸籍の調査をきちんとするのは当然のこととして)お聞きした限りでは、無用な費用や手間をかけてまで生前贈与をすることは不要と思われる。相続が発生してから、戸籍の収集や相続登記の手配などのお手伝いをさせていただいた方が、いいと考えられる。」とお伝えしました。

お困りになっている方が置かれている個別具体的な状況にあわせて、多面的な視点で問題の解決をするには、やはり、対面での情報提供や相談に勝るものはないのです。

一人一人の方が置かれている環境は、ひとつとして同じものはなく、また、常に変化しています。

そして、法制度や社会情勢も常に変化しています。

問題を解決するのに大切なことは、ひとつの手段に頼ったり、特定の方法を多用しすぎず、様々な観点から情報を収集して、慎重に判断をすることです。

そして、必要に応じて、専門家に相談することです。 問題を抱えた方の置かれた状況を多面的な視点で見て、適切な解決方法に導くのが、専門家の役割であり、そこに、専門家の存在価値があります。

まとめ

インターネットの普及により、色々な情報に簡単にアクセスできるようになり、本当に便利な世の中になりました。

しかし、あまりに急速な発展をとげ、玉石混交で真偽不明な情報が飛び交っているインターネット上の情報に頼りすぎることは、ときに、間違った判断の原因となることがあります。

情報を受け取る側も、発信する側も、そのことを肝に銘じておく必要があります。

もうひとつ大切なことがあります。

それは、情報にアクセスすることが難しい人、情報に惑わされる可能性がある人に、支援の手が行き届いていることです。

しかし、日本は超高齢社会に突入しており、支援する側の手も十分ではありませんし、それぞれの方が抱えている問題も社会構造も、ますます複雑化しています。

情報の取捨選択が適切にでき、支援を必要とする人に十分な支援の手が行き届いていること

超情報化社会では、その重要性がますます高まってきています

いくら、IT化やAI化進んでも、「人しかできない。人だからこそできる。」ことがあります

注意事項

実際には、この他にも様々な法律上の規定がありますが、分かりやすくご説明するために、上記の記述(内容)は、それらをあえて考慮せず、簡略化してあります。