もしもの時の「エンディングノート」
もし、自分の身に何かあったら
「もしもの時」はいつ来るのか、誰にも分かりません。
けれど、誰にでも、「もしもの時」は必ず訪れます。
「もしもの時」が訪れたとき、「財産、医療、介護、親戚、友人、葬儀、お墓、相続、遺言」のことなどを、家族や親戚が分かってくれている、理解してくれているという方は、殆どいないのではないでしょうか。
この記事を書いている私も、50歳を過ぎた頃から、「もしもの時」、家族にとんでもない迷惑をかけてしまうのでないか!?と、考える時間が増えてきました。
実際問題として、次のような非常に大事なことを、妻でさえ、殆どというか、まったく把握できていないのです。
「不動産や預貯金などの財産、生命保険、損害保険、医療保険、必ず必要となる連絡先、どこで最期を迎えたいのか、延命治療を受けたいのか、葬儀やお墓をどうすればいいのか、どんな介護を受けたいのか・受けたくないのか、会社や自営業をたたむにはどうすればいいのか、100個近く持っている(持たざるを得ない)IDやパスワードはどうなっているのか、クレジットカードや色々な会員登録はどうなっているのか、水道光熱費の支払いや引き落としはどうなっていているのか」など。
「もしもの時」大切な家族を助けてあげられる
「エンディングノート」を書いておけば、残された家族の負担を軽くすることができます。
細かく書いておけば書いておくだけ、間違いなく家族の負担を小さくすることができます。
しかし、「エンディングノート」を書くなんて、自分の「死」を前提にすることであって、「そんなことは考えたくない」「そんなことはまだ先のこと」と思ってしまうのは仕方のないことだと思います。
それに、本気で書こうとすると、とても大変な作業となります。
相続・遺言・成年後見・ケアマネージャーの業務をしながら、エンディングノートの必要性が“より”高いと思われる方々の支援をさせていただいている私でさえ、「エンディングノート」を書いている方にまだ出会ったことはありません。
しかし、「エンディングノート」を書いておけば、残された家族の負担を軽くできることは間違いありません。
自分のためにも「メリット」がある
「エンディングノート」は家族のためのものだけではありません。
自分のためにも、次のような「メリット」があります。
・自分の意思が明確に家族などに伝わり、老後の生活が前向きになります。
・人生のゴールをある程度自分で把握・管理して、残りの時間を有効に活用できます。
・病気やケガで意思を伝えられなくなっても、判断能力が乏しくなってしまっても、自分の意思にそった介護や医療を受けられます。
・人生の棚卸しができ、必要なものと不要なものを整理する機会となります。
「エンディングノート」ってどんなもの?
「エンディングノート」は法律上のものではありませんので、決められた規格や決まりがありません。
つまり、書かなければならない項目も決まっていません。
全部を書こうとしないで、書ける箇所だけ書く、書きやすい箇所から書き始めることでも大丈夫です。
「これだけは書いておかないと家族が困る!」という項目を、最優先して書けばいいのです。
今や、書店にも、インターネット上にも、葬儀屋さんなどにも「エンディングノート」があふれています。無料で手に入るものもたくさんあり、ページ数も、デザインも実に様々で、どれを選べば迷ってしまいます。
残念ながら、「これがいい!」とお勧めできるものはありません。
「書く人に合っているものがいい。」としか、言えません。
参考までに、記載項目の例をあげてみると、次のようなものがあります(あくまで「参考」としてみてください)。
エンディングノートの記載事項(例)
自分史、家族・親族・友人・知人の一覧、病気の告知や延命治療の希望、要介護状態や認知症になった場合の生活方法や受けたい・受けたくない介護サービスの希望、葬儀やお墓の希望、遺言書の有無、預貯金の有無や通帳の所在場所など(銀行、通帳、印鑑、暗証番号)、貸金庫の有無、有価証券他の金融資産の有無、口座自動引落しの情報(電気、ガス、水道、新聞、固定電話、携帯電話、保険料)、不動産の有無や所在、借金の有無、ローンの有無、貸したお金の有無、引き受けた保証の有無、クレジットカードの有無や情報、保険の加入状況(生命保険、火災保険、自動車保険、個人年金保険、医療保険年金)、公的年金の情報、携帯電話の情報、パソコンやスマホなどの処分方法(見られたくないデジタルデータの処理の方法)、WEBサイトのIDやパスワード、貴金属・骨董品・着物・宝物・コレクションの有無や処分方法、形見分けの希望、パスポートや運転免許証の有無、各種資格の有無と失効手続きの要否、大切な方へのメッセージ、ペットの情報(かかりつけの動物病院、いつものエサ、好きなエサ)
大切なのは「書き始めること」
「エンディングノート」を書いておけば、残された家族の負担を大きく軽減することができることは、すでに書きました。
前の項目で、参考としてあげた記載事項を見ていただければ、それらを残された家族が把握するのがどんなに難しくて、どれだけの苦労をするのかが、よく分かると思います。
だからこそ、少しずつでもいいので、「書き始めること」が大事なのです。
大変な作業ですし、書いた内容の真偽が後で問題とならないように、元気で判断能力が十分にあるうちに、書き始めることを心がけてください。
気持ちや状況が変われば、その部分を書き直してください。
そうすれば、完成度は確実に上がっていきます。
「エンディングノート」を書いておくこと、それが、必ず、あなたの大切な家族の助けになります。
気を付けて欲しいこと
「エンディングノート」は法律上のものではないので、法的効力はありません。その点は、「遺言書」とは決定的に違うということを、しっかり理解した上で書いてください。
つまり、極端に言えば、「無視されてしまう」ということも有り得ます。
それを避ける為には、相続の問題などは、「エンディングノート」とは別に、無視すれば、ペナルティがある「遺言書」を書いておくことも検討してみることも必要です。
もちろん、心を込めて、丁寧に書いておけば、残された家族は、きっと、書いてある内容を尊重してくれると思います。
書いておかなければ、何も伝わらない、何も分かってもらえないのかもしれないのですから。
また、せっかく「エンディングノート」を書いても、家族に発見されずに終わってしまったら意味がありません。
信頼のおける人に、しまってある場所を伝えておくか、見つけてもらいやすい場所にしまっておくようにしてください。
内容によっては、生前に見られたくないものもあるかと思います。
そのような場合、生前に見られてもいい(見て欲しい)「エンディングノート」と、自分が死んだ後に見て欲しい「エンディングノート」を、使い分けることも考えてみてください。
なお、口座番号やIDやパスワードなど、大事な個人情報は別に記載しておいて、「エンディングノート」には、その保管場所などを記載しておくことなども検討してみてください。
書いたら終わりではない
「エンディングノート」を書いたら、一安心ですね。
でも、人の気持ちや状況は、常に変わるものです。
一度、書いても、定期的に見直して、今の気持ちや状況に合わないところを書き直しましょう。
「エンディングノート」には、「遺言書」のように、決められた訂正方法等はありませんので、書き直したい項目は、書き直したことがはっきり分かるように(訂正したことが誰の目にもハッキリとわかるように、訂正した年月日が特定できるように)書き直すことが大切です。
注意事項
実際には、この他にも様々な法律上の規定がありますが、分かりやすくご説明するために、上記の記述(内容)は、それらをあえて考慮せず、簡略化してあります。